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A27 海外の温泉付きホテル⑩ アメリカ2:グレンウッド温泉

 前回に続きアメリカの温泉ホテルを紹介します。コロラド州のグレンウッドホットスプリングスは標高約1700メートルに位置し、ロッキー山脈を代表する山の秘湯として知られます。

 この地に古くから住んでいたユート(Ute)族はこの温泉をヤンパ(Yampa = 偉大な癒しの力)と呼んでいました。1860年代に入植してきた白人が「グランドスプリングス」と命名し、1885年にはグレンウッド・スプリングスと改称されました。アイオワから来たアイザッククーパー氏が400エーカーの土地を買い取り、妻サラの故郷グレンウッドの名を冠したのが由来です。

 グレンウッドと言えば巨大な温泉プールが有名ですが、これはグレンウッド・ホットスプリングス・ロッジが1956年に整備したもの。アメリカで一番広いともいわれる温泉プールに浸かりたくて、ロッジでの宿泊を予約しました。

 グレンウッド・スプリングスは、コロラド州の州都デンバーの空港から西へ3時間、約290キロにあります。レンタカーを利用してホテルに到着すると、駐車場は宿泊者用キーがないと入れない仕組みでした。便利な位置の駐車場を日帰り利用者に使用させないための措置とのようですが、いったんロッジに向かわなくてはなりません。ロッジの玄関前には、「チェックイン時に限り15分間だけ駐車可能」の表示。フロントの係員の対応はさわやかで、あっという間に手続きは終わりました。

 カード式のルームキーと温泉プールの利用券、施設内での買い物割引券を受け取り、再び駐車場へ向かいます。カードキーをスリットに差し込んで引き抜くと、バーが上がる仕組みでした。

左:ロッジの玄関口。周囲の景観に配慮した低層の建物で、全107室
右:駐車場の入り口。入場にはルームキーが必要と書かれている

 温泉プール側(南)の部屋を予約したのですが、道路を隔てているのでプールは見えません。伝統的なロッジだけあってとてもシンプルな造りです。部屋に荷物を置いて、早速プールへ向かいます。ホテルに宿泊して入る温泉は、パスポートや貴重品の管理に気を使わなくてよいので、くつろげます。

 庭に出ると、横長のプールがどーんと広がっています。向かって一番右手が子供用。次いで、長方形の40℃前後のホットプール。その左手が長さ123mの巨大プールです。巨大プールは右端が一番浅くて90cmですが、徐々に深くなります。かすかな硫黄臭とはっきりとした塩味のある温泉です。32~35℃前後とぬるめですが、浸かっていると不思議と温まり、寒くは感じません。一人旅なので途中でテイクアウトしてきた食材で夕食を済ませ、星空の下での入浴を再び楽しみました。

左:伝統的ロッジの客室内はシンプル
右:温泉棟の入り口
左:宿泊客用の温泉利用券
右:利用者が多くても巨大な温泉プールは空いていて快適

 翌朝、目を覚ますと、ドアの下に客室料金の精算済レシートと温泉券と朝食券が挿しこまれていました。温泉券の色は昨日と異なります。朝は気温が低いため、プールから湯気が立ち昇り幻想的でした。建物の脇にある巨大なミルキーブルーの源泉池からも湯気が上っていました。隣からも湯気が上っていたので立ち寄ると、石造りの小さめの源泉池がありました。50℃の飲用温泉で、透明な湯ですが、白い湯の華が壁面にたくさん付着しています。飲むと、プールよりはるかに濃厚な塩泉です。「ろ過していない天然の温泉なので、自己責任で飲むように」という説明看板がアメリカらしいです。湯気がなければこの源泉池に気づかないところでした。

左:早朝のプールは湯気が立ち込め幻想的
右:同じく早朝の源泉池
左:50℃の飲用源泉
右:飲用源泉の由来と注意事項

 朝食はプール棟に併設された「グリル」で7時から。簡単なビュッフェ形式で、フルーツサラダ、飲み物、ベーグル、シリアル、卵のラップサンドなどを自分でとります。卵料理とパンはカウンターで注文します。おいしいのですが、脂っこくアメリカンな味で、量が多くて食べきれませんでした。

左:グリルの入り口。7時に行ったら客は2人だけだった
右:量も質もアメリカンな朝食

 せっかく温泉券をもらったので、再び入浴し、11時にチェックアウトしました。アメリカでは数少ない伝統を感じさせる宿で、大型の温泉プールでの入浴は思い出に残るものでした。