世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

D3 「地球の歩き方」WEBマガジンでの連載が始まりました(その2)!


 「地球の歩き方」WEBマガジンでの連載が始まりました(その2)!

 

 温泉本「ほぼ本邦初紹介!世界の絶景温泉」の出版がご縁となり、先月から「地球の歩き方」のWEBマガジンに、世界の温泉旅行記の連載を始めました。タイトルは「絶景温泉探検家、鈴木浩大の世界のスゴイ温泉旅」。自分ではちょっとこそばゆい感じですが、名に恥じない連載となるよう頑張ります。

 

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 第1回「南米コロンビアで知られざる湯滝に出会う」に続く第2回のタイトルは、

中国・内モンゴルにある「中国温泉博物館」と歴史遺構を訪ねて

です。日本の傀儡国家「満州国」が存在したのは、中国東北部に1932年から第二次世界大戦終結の1945年までの短い期間です。この間、多くの日本人が移り住み、温泉を「発見」しました。もちろん、以前から中国の人々が利用していた温泉が大半ですが、日本人は温泉を積極的に開発し、浴場や宿泊施設を建設しました。

 筆者が満洲国の温泉に興味を持ったのは、約30箇所の温泉リストを見つけたのがきっかけです。半数ぐらいの温泉には簡単な解説文があったのですが、残りは温泉名と大まかな住所しかわかりません。俄然、興味が湧いて、数回に分けてリストにある温泉を実際に探し歩いてみました。近場の遼寧省を手始めに、中国大陸を奥へ奥へと旅するようになり、最後に残ったのがアルシャン温泉です。ネットで検索すると「中国温泉博物館」なる立派な写真がみつかりますが、はたして入浴施設なのか、なぜ博物館と名乗るのかがわかりませんでした。「それなら、現地で確認してみよう」と、アルシャンへの旅に出発しました。

 第1回のセタキラの湯滝は野趣あふれる野湯だったのと対照的に、満州国やノモンハン事件などの歴史に興味のある人にも関心を持ってもらえるような温泉です。詳しくは、ぜひ「地球の歩き方」のWEB版をご覧ください。

 

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第2回連載ページ

 

【アルシャン温泉は二つある】

 このブログでは、文字数の関係で紹介できなかったトルグアルシャン温泉を紹介します。

 満洲国の温泉資料には、もう一つのアルシャン温泉が記載されています。東へ40キロに位置する特日根阿爾山(トルグアルシャン)温泉です。区別するときはメインの温泉をハロンアルシャン温泉と呼びます。ハロン(哈倫)は「熱い」、トルグ(トルグン)は「小さい」の意味です。アルシャンは漢字で「阿爾山」と書くため、山岳地のように誤解されますが、「泉」という意味で、山ではありません。

 トルグアルシャン温泉は現在、金江溝(中国語では金江沟)温泉と呼ばれています。アルシャン市内から入り口となる森林公園のビジターセンターまでは車で約2時間。周囲には摩天嶺、天池、杜鵑湖、石塘林などの景勝地が点在するため、道路を整備して観光客を呼び込む計画があるそうです。温泉はここから約6キロ離れた道路の終点にあります。なぜか、やけに精密な距離を示した標識があり、思わず車を停めてもらいました。

ケタ違いに詳しい温泉までの距離を示す看板

 標識に従い進むと、すぐに温泉は見つかりました。広場の一角にコンクリート製の浴槽があり、地元の男性2名が浸かっていました。源泉は47℃といいますが、体感的には40℃程度でしょうか。浴槽の底の小石の間から湯が湧き、無数の気泡が湧き上がっています。無色透明だそうですが、人が浸かると底の泥を巻き上げて濁り湯のようになっていました。

 温泉があると、すぐに大規模施設を作ってしまう中国では珍しく、素朴な露天風呂があるだけです。逆に言えば、それほどの僻地だということになるでしょう。かつて、開発の計画があり工事に着手したそうですが、みたところ完全に中断したままでした。

二つの浴槽があるが、右手は温泉で、左手はかなりぬるい

 なお、当時の記録を読むと、周囲には冷鉱泉から温泉まで7つの源泉があるとのこと。地元の人に聞くと、少し離れた場所に古い源泉井戸があり、ぬるめの温泉が染み出していました。また、その手前の池からも微温泉が湧いているようですが、周囲が湿地で近づけませんでした。

 今回の記事を作成するにあたって調べたところ、金江溝までの道路は非常によくなり、温泉も長方形の大きなプールに改装されたようです。だが、周囲の素朴な佇まいは変わっていないようです。

左:源泉井戸の一つ。染み出した微温泉が流れだしていた
右:源泉井戸の手前の池では随所で小さな気泡が上がっていた

 アルシャン市内からトルグアルシャン温泉に向かう途中、ハルハ川の脇を通ります。戦史好きな人ならピンとくるかもしれません。第二次世界大戦の直前、日本・満州国連合とソ連・モンゴル国連合が国境線の画定を争って衝突したノモンハン事件の舞台です。「地球の歩き方」WEBではノモンハン事件の戦跡についても紹介しました。ご覧いただけると嬉しいです。

左:ノモンハン戦役遺址陳列館
右:陳列館に展示されていた「満洲帝国」境界の石碑