世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

C9 アメリカの空港で国際線乗り継ぎ・入国時の留意点

【はじめに】

先日、中国 上海の空港での国際線乗り継ぎ時の詳細を紹介しました。日本の航空会社の特典航空券を利用する際、深く考えずに中国乗り継ぎを選んでしまうと、意外に手間がかかることや具体的に何が行われるのかという話でした。

温泉とはまったく関係のない記事だったのですが、従来に比べ10倍近いアクセスがありました。「世界の温泉」に関するブログを書いている身としては、喜んでいいのか、微妙です。とはいえ、味を占めてもう一回、アメリカの空港での乗り継ぎ、入国時の思い出話をまとめておきます。

 

アメリカも中国と同様に、国際線から国際線へ乗り継ぐ場合でも、いったん入国しなくてはなりません。これまでに何度も入国しましたが、ESTA(電子渡航認証システム)の導入やパスポートの機械読み取りの普及など、システムはその都度少しずつ変化してきました。ただ、アメリカの出入国時に大変なのは、① 入国審査官との会話と、② 出国時の荷物検査の二つで、大きな空港の場合は、③ ターミナル間の移動にも注意です。

アメリカは日本と同じく環太平洋火山帯に位置する国。温泉は環太平洋、すなわち西海岸に集中しています。このため、ニューヨークやワシントンD.C.など東海岸の空港を使ったことはありません。西海岸では主に、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルの3空港を利用したことがあるので、その経験をもとに留意点を説明します(最新の状況と異なる場合はご了承ください)。

アメリカン、ユナイテッド、デルタの3大エアラインをはじめ非常に多くの会社がアメリカの空港に乗り入れている(左)
イヌイット(かつての呼び名はエスキモー)のおじさんが尾翼に記されたアラスカ航空の飛行機がずらりと並ぶシアトル空港(右)

【入国審査】

事前に、WEBでESTA(電子渡航認証システム)の承認を受けておけば、形式的な審査はすぐに終わります。しかし、入国審査官が必ず英語でいくつかの質問をしてくるので、それに対応しなくてはなりません。最近、女性のインフルエンサーの方がハワイの空港で入国を拒否されたというニュースが話題になっていましたが、私自身はそこまで厳しい追及を受けたことはありません。ただ、英語でのやりとりは必須で、係官によって当たりはずれは大きいです。「目的地」「滞在期間」「滞在日数」「滞在先」「職業」「食品類を持っているか(検疫の関係)」「帰りの航空券を持っているか」「一人旅か否か」など、質問はだいたい決まっており、そのうちのいくつかが質問されます。

私の場合、目的は「観光」と答えます。そのまま次の質問に移ってくれれば幸いですが、「一人旅でどこへ何しに行くんだ」と興味を持たれると、追加の質問を受けます。その際は、「温泉のガイドブック③ アメリカ」の記事で紹介したようなガイドブックをすぐに見せると、だいたいOKです。要は、「説明が一貫しているか」、「話が途中で変わったり、矛盾したりしていないか」が重要なのです。中には「どこの温泉がお薦めか」「私は○○の出身だが、良い温泉があるぞ」などと話しかけられたこともありますが、こうなれば「審査は終わったも同然」です。

なお、ガイドブックを見せる場合は、サブバッグか何かに入れてすぐに取り出せる状態にしておくことが重要です。銃社会のアメリカでは、目の前でカバンの中をガサゴソと探すのは好まれず、「探す必要はない」などとピシッと言われてしまいます。

 

【税関検査】

肉、植物、フルーツは防疫上、持ち込み禁止です。「食べ物を持っているか」と入国審査官に聞かれたり、税関の申告書に記入したりする必要があります。私は海外の長旅の際、「尾西のアルファ米」を長年の友としているので「Freeze Dried Rice」と答えるようにしていますが、発音が悪くて苦労することもあります(税関申告書にもそのように書きます)。実際にはカバンを開けて検査されることはまれですが、「何も持っていない」と答えて、見つかると厄介です。食べ物は、のど飴であっても申告した方がよいと思います。食べ物や危険物を持っていなければ、税関検査は何も恐れる必要はありません。

食べ物に関してはエピソードに限りがありません。アメリカ在住の知人が、日本に帰国した際に大量の梅干を買ってアメリカに入国しようとしたところ、「種があるから植物だ」と検査官に言われて、その場で種を全部外してOKをもらったと話していました。私が入国した時に、日本人のビジネスマンがカバンを開けさせられて、大量のレトルトカレーの説明をしていました。長い赴任中にカレーを食べたい気持ちは理解できますが、彼がそのまま通過できたのかは今でも気になっています。

 

【ターミナル間の移動】

晴れて入国した後は、次の便の搭乗を目指します。国土の広いアメリカは飛行機の利用率が高いため。空港のターミナルも巨大です。ロサンゼルス空港(LAX)などは、ターミナルが9つに分かれているので、到着便と出発便のターミナルが異なる場合には「大移動」が必要です。アメリカの国内線から国内線への乗り継ぎであっても、ターミナルが離れていると、いったん出口を出て改めて出発検査を受けなくてはならず、時間がかかります。これまでの経験上、国際線から国際線、国際線から国内線への乗り継ぎの際は、3時間以上の余裕があると安心です。事前にどのターミナルに着いて、次の便はどのターミナルから出発するのかを地図で頭に入れておくのが望ましいです。もしくは、同じターミナルから出発する便に乗り継げるなら、少し値段が高くてもその航空会社を利用するのがお薦めです。

空港ターミナル内には警察官も配置されていますが、深夜帯にターミナル間を移動するのは少し不安です。その意味も、ターミナルの情報、フライトの時刻等は事前に十分に把握しておきたいものです。

ロサンゼルス空港のターミナル説明図
Discover Los Angeles 公式Webサイトより

【トランジットホテルの利用】

乗り継ぎのフライトが翌朝になる場合には、近隣のホテルに宿泊するのが便利です。若くて体力があれば空港内のベンチで寝るという選択もありますが、年をとってくると、これでは疲れがとれません。世界の空港の中には、空港のターミナル内にホテルがあったり、しかも国際線のセキュリティエリア内にホテルがあったりという便利な空港もあります。

例えば、インドのニューデリーで国際線を乗り継ぐ場合、入国する必要がなく、次の便の搭乗口を確認したら、近くのトランジットホテルでゆっくり過ごせます。搭乗時刻が迫ったら、事前に確認したゲートに向かうだけなので、心理的には本当に楽です。一方、成田空港では、空港のターミナル内にホテルはないので、送迎のシャトルバスを利用してそれぞれのホテルに向かい、翌朝再び空港に戻ってくる必要があります。アメリカの大きな空港では、ターミナル内にホテルがないことが多いので、成田と同じく、送迎のシャトルバスを使う必要があります。この場合、シャトルバスは何分間隔で運行しているのか、シャトルバスはそのターミナルのどこから発着するのか、早朝、夜間でもシャトルバスがあるのかなどを事前に確認しておく必要があります。できれば、ホテルのWEBサイトで実際のシャトルバスの色やデザインを確認しておくと、次々とやってくるシャトルバスの中から、自分が乗るべきバスを見つけやすくなります。

決して、バス側から見つけてくれるわけではないので、うっかり見落とすと、さらに30分以上、待たなくてはなりません。注意が必要なのは、近隣の複数のホテルが共同でバスを運行しているケースです。バスの車体に複数のホテル名が書いてあるので、それを探します。また、どのホテルから回っていくのかという情報も重要です。成田でもそうですが、ホテルの組み合わせや場所によっては空港との往復にかなりの時間を要することになります。大原則としては高級なホテルであればあるほど、単独運行で運行頻度も高い傾向にあります。最終的には財布と相談して、ホテルを決定すればよいと思います。

アメリカのローカルな空港だと、空港に着いてホテルに電話すると迎えに来てくれるという場合があります。英語での電話はハードルが高いかもしれませんが、伝える内容は限られているので、事前にリハーサルしておけば大丈夫だと思います。問題はそのホテルは定期的にバスを運行しているのか、電話で呼ぶ方式なのかを事前に把握しておくことです。

余談ですが、フィンランドのヘルシンキ空港で国際線を乗り継ぐ際に、ターミナル外のホテルを利用したことがあります。22時の到着で空港のゲートから100メートルほど歩かなくてはならないので、少し不安でした。しかし、フィンランドは高緯度にあるため、6月は22時でもまだ外が明るくて、ビックリするとともに安心したのを覚えています。トランジットホテルの情報は事前に十分に調べていくのですが、日没時刻までは計算していませんでした。

中南米との往復ではダラス、ヒューストンなど、アメリカ南部の空港での乗り継ぎも便利。写真はダラス空港のターミナルを結ぶスカイリンク(左)
フライトの集中する時間は同時刻に同じ搭乗口から複数の便が出発することも。(右)

【復路での入国審査】

日本からアメリカに着いた時の入国審査についてはすでに述べましたが、中南米が目的地だった場合には、復路で再びアメリカに入国する必要があります。中南米のほとんどの国はESTAの対象国ではありません。このため、例えばグアテマラからアメリカ行きのフライトを日本人が利用する場合、グアテマラの空港でESTAの承認を受けているかどうかを確認されます。時にはこれが厳格で「承認された用紙を見せろ」と言われたことがあります。ESTAを持たずにアメリカに着いて、入国できずに追い返された場合は、航空会社が負担することになるので真剣です。また、他の国へのフライトと異なり、中南米からアメリカ行きの便に乗るときは、特に厳格な出国検査があります。

こうした審査を受けてアメリカに到着すると、再び入国審査官との会話が必要になります。治安のよいチリから帰国したときはスムーズでしたが、グアテマラやエルサルバドル経由だと、審査官の質問にも力が入ります。「一人でグアテマラへ何をしに行ったのか」と興味を持つ審査官にぶつかると、何問も回答しなくてはなりません。帰りのチケットを見せて、「すぐに次のフライトに乗る」と説明しても、まったく考慮しないで質問を続ける審査官もいます。とにかく、審査官次第なのです。

大きな空港ではフォーク式に一列に並んでいて、あと数人というところで、「あなたは○番ゲートへ」と振り分けられます。自分の順番が近づいてくる段階で、「○番の審査官は厳しそうで嫌だな」などと思っていると、たいていはそのゲートが空いて案内されます。そんな場合でも、できるだけ笑顔で審査に臨むようにしています。

 

【出国審査と保安検査】

  アメリカでは出国時の審査も税関の検査もありません。入るときは厳格ですが、出るときは「どうぞ」なのです。ただし、保安検査(セキュリティチェック)は厳格です。最新型のボディスキャナーの感度は非常に高く、ポケットに残っていたキャンディの包み紙の切れ端まで、「ポケットから出すように」と言われたことがあります。

腰痛のため、大きな荷物を持って海外を移動するのが不安だったため、腰痛ベルト(サポーター)を腰に巻いていたことがあります。この時は、大変な剣幕で、「腰に巻いているものを外せ」と怒られました。密輸や爆発物などと間違われる可能性があるのでしょうか。その話を帰国後にアメリカ人にしたところ、大笑いされました。「アメリカでは腰痛ベルトはあまり使われていないし、腰に何かを巻いているというのは危ないサインだから、絶対に引っかかるよ」とのこと。以来、腰痛ベルトを巻いているときは、出国審査前にトイレで外すようにしています。

また、液体の検査も厳格で、ボディスキャナーはシャツの汗などを検知します。検査機を通過後、係員から画像を見せられると、背中と腋の下に水分マークがついています。特に重いリュックを背負って別のターミナルから移動してきたので、背中は完全に濡れています。係員は不快そうな表情で、Tシャツの背中を触って確認してきます。「汗だよ」と説明すると、「わかってるけど、これが仕事なんだ」と表情を変えずに答えてくれました。以来、あまりに汗がひどい時は、トイレでTシャツを着替えるようにしています。電化製品の検査も厳密ですが、透明な袋に入れてひとまとめにしておけば、中国ほどは厳しくないように感じます。

 

【おわりに】

  いくら道中が大変だったとしても、念願の温泉に到着すると、それまでの苦労はほとんど霧散してしまいます。その中でも、記憶から薄れないエピソードを中心に書いてみました。ただ、今回の記事はコロナ禍前の経験を集約したものです。多くの点で、今も変わらないと思いますが、もし異なる点があればご容赦ください。