世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

B5 霧島の温泉② (山の湯、平落、山ん城)

 鹿児島県の霧島地方のマイナーな温泉を再び紹介します。

 鹿児島空港の東、新川に沿って設けられた国道255線は、妙見、安楽、日の出、塩浸などが連なる温泉街道です。素朴な浴場から豪華宿まで選択肢も豊富です。日の出温泉きのこの里から南側に走ってすぐの川向い(右岸)に山の湯という温泉がありました。1998年11月に訪ねたときは、城山観光グループ福祉研修センターという看板が掛かっていました。霧島地域の温泉を制覇すべく訪れた旅でしたので、橋を渡って受付で尋ねてみました。一般客向けの施設ではないようですが、ダメ元で「ぜひ入浴したい」とお願いすると、あっけなく「いいよ」との返事。わずかに緑色を呈した内湯に浸かれました。

 扇形の浴槽は2つに区切られ、奥の壁側に岩を重ねた湯口があります。奥側はかなり熱めですが、手前側の浴槽もけっこう熱かったと記憶しています。脱衣室には成分表があり、源泉名は山の湯二号泉、59.2℃と確認できました。その後、研修センターは閉鎖され、日帰り浴場として営業していた時期もあったようですが、2022年に車で近くを通ったときには立入禁止で「売物件」の看板がありました。「源泉2本、78℃」と記されているので、1号泉が78℃なのかもしれません。対岸から見ると建物の右下に内風呂より濃い目の緑色の池が見えます。露天風呂だと思い、内風呂からの通路を探したのですが、発見できませんでした。これが1号泉だったのか、内風呂の排湯だったのか、どこかにつながる通路があったのか、今となってはわかりません。

左:1998年の山の湯外観。右下に「露天風呂」が見える
右:山の湯の内湯。とても熱い湯だったと記憶している
左:山の湯の脱衣室の分析表
右:2022年には橋の先が閉鎖されていた

 再び、日の出温泉を起点に、南側に数十メートル戻ります(すなわち、日の出温泉と山の湯の中間です)。ガードレール越しに右手の川(左岸)を見下ろすと、斜面に素朴な露天風呂がありました。文化八年湧泉(一八一一) 平落温泉神祠という布のかかった小さな祠が見えます。傍らの露天風呂は少し緑色に濁っていて藻が浮いていましたが、十分に入浴可能です。足元自噴の湯でぷくぷくと気泡が表面に現れていました。その後、湧出量が減り、もう少し下流側に設けられた露天風呂が今は山の湯と呼ばれているようです。日の出温泉の旧称は平落温泉だったそうですので、時の流れとともに温泉名が少しシフトしたのかもしれません。

左:国道255線脇の平落温泉。正面が日の出温泉きのこの里
右:温泉の由来を示す白布。かけ替えられたばかりのようできれいだった
左:平落温泉の露天風呂。温泉マニアなら問題なく入浴できる
右:湯面のアップ写真。気泡が立ち上るのがわかる

 道を北上し霧島温泉の中心地へ向かいます。湯之谷山荘の硫黄臭溢れる内風呂は今より浴槽が1つ少ない2つでしたが、硫黄谷温泉の広大な混浴内風呂は今と同じでした。霧島いわさきホテル(林田温泉)は霧島を代表する大型宿でしたが、平成29年に残念ながら閉館しました。ここから日添林道を5キロほど走った先にあるのが山ん城(やまんじょ)温泉です。川自体が温泉で、川原の随所から噴煙が立ち上るという誠に豪快な野湯でした。現在は硫化水素中毒の恐れがあるとのことで立入禁止になっているようですが、当時は規制がなかったと思います。野湯を紹介する本にも堂々と記載されていました。訪れた日は微風で、広大な川原には数人の温泉マニアがいるのみ。各自がかなり離れた場所に陣取っていたので、川湯を独り占めといった雰囲気です。温泉と川の水が混ざって適温の場所を探して、秋晴れの日の入浴を楽しみました。

2枚とも:山ん城温泉の川湯。今は立入禁止となっている