今回は温泉の話が登場しません。中国で国際線から国際線に乗り継ぐ際の情報提供ですのでご了承下さい。
【中国で乗り継ぐ際はいったん入国する必要がある】
航空会社のマイルをためて、特典航空券をゲットすれば、無料で海外旅行に旅立てます。ただ、発券できる特典航空券の枚数には限りがありますので、希望する日の希望する路線を確保できるとは限りません(むしろ確保できないのが普通です)。東京からヨーロッパ、中東、アフリカなどへ向かう際、直行便に空きがない場合は、韓国、中国、インドなどを経由する便が候補として画面上に示されます。「直行便がないなら、上海経由でもいいか」と軽い気持ちで選択してしまうかもしれません。しかし、中国での国際線乗り継ぎは慣れていないと戸惑うので、一連の流れをまとめておきます。
日本の航空会社のWEBサイトでは、「中国での国際線乗り継ぎ」について以下のような説明があります。
国際線から国際線へのお乗り継ぎでも、一旦入国が必要です。「検疫」「入国審査」「税関審査」を済ませて入国し、乗り継ぎ先航空会社チェックインカウンターで出発の手続きを行って下さい。
簡潔な文章ですが、諸々の手続きが省略されていて、これでは現地で戸惑ってしまいます。
中国系の航空会社を利用し、同一航空会社を同一ターミナル内で乗り継ぐ場合は、入国しなくても乗り継げるようですが、それ以外の場合は、すべていったん入国して、改めて出国することになります(時間的な余裕が必要です)。私は日本への帰国時に、外国の航空会社を利用して上海浦東空港に着き、日本の航空会社に乗り換えて東京へ戻りました。上海の虹橋空港や北京の空港でも事情はさほど変わらないと思います。
【事前に得ていた情報】
中国での国際線乗り継ぎに関して、2023年10月初め時点で公開されていた情報は下記の通りです。
(1) コロナ前に適用されていた「15日間の査証(ビザ)免除措置」は依然として停止中である。
(2) ただし、2023年1月29日より、日本国籍を持つ者へのトランジットビザ(国際線乗り継ぎビザ)免除措置は再開された。有効なパスポートを所持しており、72時間、もしくは144時間以内に第三国へ出発する乗り継ぎ航空券を持っていれば、トランジットビザ免除措置が適用される。
(3) 2023年8月30日をもって、新型コロナウイルス水際対策を緩和し、渡航時に義務付けていた出発48時間前以内の抗原検査、またはPCR検査は不要とする(=陰性証明や機内の座席位置の申告は不要)。
(4) ただし、中国での入国に際し「健康申告完了画面(QRコード)」の提示が求められる。
このうち、④については、予めChina Customs(中国税関)というアプリをスマホでダウンロードして必要事項を入力し、QRコードを取得して、画面を保存しておく必要があります。QRコードを得るための方法は他にもありますが、China Customsが一番簡単です。なお、直前の健康状態の申告が必要なことから、QRコードの取得時刻は24時間以内である必要があります。つまり、3日の15時に中国の空港に到着する場合には、前日の2日の15時以降に取得したものでなければいけません。QRコードの有効期限は画面に示されており、その時刻を過ぎると無効になります。
【中国の空港に着いたら】
乗り継ぎではなく「到着」方向に向かいます。
(1) 指紋採取
「入境外国人指紋自助留存区」の表示とともに、指紋採取用の機械がずらりと並んでいます。パスポートの顔写真のページを置くと、読み取りますので、指示に従い、左手の4指(親指以外)、右手の4指、両方の手の親指の順に読み取ります。読み取りが成功するとレシートのようなものが発券されるので、それをもって進みます。なお、台によって読み取りがうまくいかないことがあります。10秒経ってもパスポートを読み取れない場合は、他の台に移るか、係員に声をかけると手伝ってくれます。後述のように、国際線乗り継ぎの場合はここでの指紋採取は不要なのかもしれませんが、1分もかからないので、やっておいた方が無難です。
(2) 健康申告
いきなり多くの外国人が滞留しています。上記の(4)で示した健康申告を知らずに中国へ来た人が多く、China Customsをその場でダウンロードしています。そのための大混雑なので、取得済みであれば、脇を通り過ぎれば、あっという間に列を追い越せます。係員にスマホ画面のQRコードを見せると、にこやかにOKの返事。読み取り機に照らすと、「OK」と表示されます。ついで、体温を一人一人、顔で測定します。なお、スマホを持たない人のために、画面から選択肢を選んで入力すればQRコードを印刷できるPCが数台置いてあります。必要事項を正しく入力すると、QRコードが印刷されるようですが、台数が少ないため、時間がかかるかもしれません。
(3) 入国審査(要注意!!)
コロナ前と入国カードは変わりました。今は黄色でなく青いカードで「外国人入境卡」と書かれています(「卡」はカードの意味)。これに記入して「外国人」の列に並びます。フォーク並び方式なので九十九折に進みます。列の先頭まで来ると、5つほど開いているカウンターの何番に進むか、係員が指示してくれます。ここでは、書類の記入に不備がないかもチェックされるのですが、乗り継ぎの航空券を見た係員から、「あなたはこのゲートではない。5番ゲートに行って、別のカードに記入するように」と英語で言われました。「それなら、列に並び始めた時点で教えてくれれば30分近く早かったのに」と思いますが、どうしようもありません。
→ 効率的に国際線乗り継ぎを行うには、通常の入国審査ではない、別の審査場があることを頭に入れておく必要があります。この情報はほとんど知られていません。
(4) 臨時許可証の発行
上海浦東空港の5番ゲートに向かうと、「24H/144H Transfer」と表示されていました。「臨時入境外国人入境卡(出境卡とつながっている)」に、乗ってきたフライトやこれから乗るフライト情報を書き込みます。24H/144Hの表示に戸惑いますが、24~144時間ではなく、24時間以内の乗り継ぎ、または144時間以内の乗り継ぎという意味です(空港によっては72時間など、別の期限が設定されています)。私のように10時間程度の乗り継ぎなら、24時間以内の乗り継ぎと分類されます。係官に、記入したカード、パスポート、乗り継ぎの航空券(もしくは航空券情報を記したe-チケット)、指紋採取済証を提示します。すると改めて顔写真と指紋(左手の4指のみ)を採取されるので、先ほどの指紋採取は不要なのかもしれません。まもなく、翌日(=24時間)が期限の「臨時入境許可」というシールを貼ったパスポートが返却されます。入国スタンプは押されていません。
(5) 税関検査
荷物をスキャンするために、ベルトに荷物を載せるように言われます。大型の荷物が多くて混んでいたためか、日本のパスポートをみせると、スキャンしなくて良いので、通り抜けるようにジェスチャーで示され、素通りしました。
(6) 荷物受け取り
ようやく預けていた荷物を受け取れますが、ここまで1時間半近くかかっていますので、ターンテーブルは回転を止め、荷物が台上に放置されています。私は極力荷物を少なくして、預け荷物のないように心掛けていますが、預け荷物がある場合は、ちゃんと残っているか不安になるかもしれません。
これで晴れて入国です。もし、入国の列に並ばず、最初から臨時入境許可の列に並んでいたら30分は早かったと思いますが、それでも、飛行機の到着から入国まで1時間近くはかかると思います。乗り継ぎ時間が少ない場合は、China Customsを準備しておき、並ぶ列を間違えないようにしたいです。
【中国からの出国】
次は国際線の出発階に移動して出国の手続きです。私は乗り継ぎの航空券を持っていたので、そのまま出国審査場に向かいました。持っていない場合は、航空会社のカウンターで発券してもらう必要があり、その分の時間を見込む必要があります。
(7) 健康申告
入国時と一緒で、QRコードを読み取り、顔で体温を測定されます。China Customsに入力する際、入国か出国かを選ぶ必要があるので、それぞれ入力してQRコードを保存しておく必要があります。24時間以内に入力されたコードさえあれば、笑顔で通してくれます。
(8) 出国審査
パスポート、航空券、入国時に受け取った出入国カードの半券を示します。再び顔写真を撮られて、すぐに通過できます。
(9) 荷物検査
比較的厳格ですが、恐れる必要はありません。私はコロナ前に何度も中国の温泉を旅したので、その経験を元に書きます。
① 係官が一番気にするのはモバイルバッテリーです。発火のリスクがあるためか、念入りにチェックされます。個人用とレンタルWifiに付属していた2台程度なら、問題ないですが、多数のバッテリーを所持していると質問されるかもしれません。
② 電子機器:私はスマホ2台、カメラ1台、ノートPC1台を持参することが多いですが、この程度で問題になったことはありません。電子機器はケーブルも含め、透明な袋に入れて、堂々と見せるのがよいと思います。
③ 液体類:同様に、同じ種類のものを多数持っているのでもない限り、透明な袋にひとまとめにしておけば問題ありません。
④ 傘:傘をバッグに入れたままだと引っかかります。バッグから出しておいた方がよいでしょう。
なお、ボディスキャンはほぼ全員が引っかかって、ハンディスキャナーを体の表面に当てての再検査が行われます。一通り検査をすれば大丈夫です。
【まとめ】
これで国際線の出発エリアに到着です。私の場合、空港への到着から出国までトータル2時間15分ほどかかりました。入国審査の列を間違えなければ30分ほど早かったと思いますが、それでも1時間半はかかるでしょうし、乗り継ぎチケットの発券が必要な場合はさらに時間がかかると思います。
以上の一連の流れを頭に入れておけば、気持ち的にはずいぶんと楽になるかもしれません。中国での国際線乗り継ぎを予定している人のお役に立てれば幸いです。
なお、日本人へのノービザ入国の再開、健康報告の書式変更、新型コロナ感染状況の変化、取り巻く国際情勢の変化などによって、上記のプロセスは変更されることも考えられます。あくまでも2023年10月初めの状況報告であることをご理解ください。
国際線から国際線への乗り継ぎのしやすさは国によって異なります。韓国(仁川)、インド(ニューデリー)などではいったん入国する必要がなく、セキュリティチェックを受けるだけで、すぐに乗り継ぎ便の搭乗口に向かえます。一方、中国やアメリカではいったん入国する必要があるケースが大半です。直行便ではなく、乗り継ぎ便を選択する場合は、その空港はどのような乗り継ぎ形態かを把握しておくとよいと思います。