フリープラン(またはフリーステイ)とは、海外の特定の都市に滞在するツアーです。通常、日本からその都市までの往復航空券とホテルの宿泊がセットになっており、空港からホテルまでの送迎を含むものもあります。毎日の観光は含まれていないので、自分で公共交通機関を利用するか、現地のオプショナルツアーの中から好みのものを選ぶことになります。現地のツアーを探す場合、「専用車」というキーワードに注目してください。運転手付きのレンタカーのようなもので、行きたいところだけを回ってもらうことができます。一人での利用の場合は割高ですが、数人で割れば、最も効率的な移動手段です。現地で探すことも可能ですが、日本で現地オプショナルツアーを予約できるサイトも充実しています。
(1) 台湾(台北)
前回のパッケージツアーでも挙げた台湾ですが、北投(ペイトウ)温泉のみならず、近郊にも魅力的な温泉がたくさんあります。治安がとてもよく、多くの温泉は鉄道やバスでアクセスでき、漢字表記なのでだいたい意味がわかるなど、旅行しやすい国です。台北に3~4日滞在するフリープランのツアーならば、1日か2日を温泉巡りに割くのもよいかと思います。
鉄道で少し遠出してみるなら、東海岸の宜蘭(イーラン)県の温泉がお勧めです。東部幹線の特急列車に乗り、宜蘭の1つ手前の礁渓(ジャオシー)駅で降車すれば、温泉はすぐ目の前です。SPA設備のある豪華宿に民宿風の小さな宿、共同浴場も多数あって、様々な温泉を楽しめます。ただし、礁渓温泉は基本的に無色透明で無味無臭の湯が多いので温泉らしさは感じにくいかもしれません。
その場合には、蘇澳(スーアオ)冷泉がお薦めです。無数の気泡が身体にまとわりつく天然の炭酸冷泉で、泉質的なインパクトは十分です。南国の台湾では、冬でも冷泉に浸かれますし、宮殿のような蘇澳冷泉公園はお薦めです。公園の奥で加熱浴槽のある個室風呂を選べば、温冷交互浴も楽しめます。蘇澳冷泉へは宜蘭から鉄道で25分ほどの蘇澳新駅からバスで5分です。
もっと遠出するなら、東部幹線をさらに南下し、花蓮(ファーリェン)県の瑞穂(ルイスイ)温泉を訪ねてみましょう。日本統治時代に開かれた瑞穂温泉山荘は台湾に珍しい茶褐色の濁り湯です。周辺には小さな温泉民宿や日帰り温泉施設も多くあります。
(2) ハンガリー(ブダペスト)
ハンガリーは知る人ぞ知る温泉王国。九州ほどの面積の国土に、100を超える温泉地と500近い温泉施設があります。「ドナウの真珠」と称されるブダペストも例外ではありません。王宮のあったブダの丘の南麓にあるゲッレールト温泉は百年以上の歴史を誇る伝統的な建物。アールヌーボー様式の太い柱が並ぶ広大な温泉プールがホテルのシンボルで、階下には硫黄臭の漂う男女別内風呂があります。柱頭飾りが美しい鮮やかな黄色の建物のセーチェニ温泉も人気です。ブダペスト市内の温泉の多くは市電と地下鉄で移動できます。1896年開業の地下鉄1号線はロンドンに次ぐ世界で二番目の古さ。世界遺産にも登録されています。
郊外に目を転じると、湖全体が温泉というヘーヴェーズ。巨大な石灰棚を眺めて浸かるエゲルサローク温泉の露天風呂などが人気です。いずれもブダペストで専用車をチャーターすれば、日帰り可能です。
(3) インドネシア(バリ島)
リゾートアイランドのバリ島で温泉?と思うかもしれませんが、インドネシアは大小の火山島で構成される島国です。バリにも多くの温泉が湧いていて、ガイドブックを開けば、必ずいくつかの温泉が載っているはずです。バリは観光の島なので、専用車を一日貸切れば温泉を含め、島内の観光を楽しめます。
筆者のお薦めを二つ紹介します。一つはバンジャールテガ温泉。バリの雰囲気に浸りながら、入浴するのに最適な温泉です。ヒンドゥー教が主流のバリでは数少ない仏教僧院の近くにあります。源泉は38℃で硫黄臭を感じますが、露天プールはかなりぬるめです。きれいな黄緑色の湯が印象的で、凝った意匠の龍の湯口から勢いよく湯が注いでいます。国際空港のあるデンパサールから車で3時間程度かかりますが、温泉好きならば行ってみる価値はあります。
もう一つは、バニュウェダン温泉。デンパサールから4時間近い北西岸にあります。バリ島南部の喧騒を離れ、静かな滞在を楽しむのに最適です。日帰りだと少し大変ですが、ミンピ(夢)と名づけられたリゾートホテルには温泉露天風呂付きの客室があります。硫黄臭の強い湯を独占できますし、湯温が40℃以上あるのも日本人には嬉しいです。パブリックなエリアには海を臨む円形の露天風呂が3つ並んでいます。バリ島南部の有名リゾート地に比べれば、宿泊料金も抑えられているので、一泊してみるのをお薦めします。
このほか、デンパサールから1時間半ほどと一番近いパナタハン温泉やバトゥール湖畔のトヤブンカ温泉が良く知られています。