世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

C6 日本で知られていない温泉をどうやって探すのか①

 温泉本を出版してから一番多かった質問は「どうやって温泉を見つけたのか」というものです。いくつかの方法がありますので、2回にわたって紹介します。

 

(1) 温泉専門のガイドブックで探す

 これまで8回にわたって世界各国の温泉ガイドブックを紹介してきました。ネット時代とはいえ、その国の温泉を体系的に整理したガイドブックはやはり便利です。ガイドブックを読んで初めて知った温泉は数多くあります。拙著に掲載した温泉の中では、① カナダの離島ホットスプリングアイランド(Hot Spring Island)、② 海辺で少女たちが浸かっていたカフィア(Kawhia)、③ 渓谷内の滝つぼにバスタブが置かれただけのトゥトゥカウタブス(Tutucau Tubs)、④ 高温の気泡湯で泥湯かつ炭酸泉のナファ(Ngawha)などが該当します(②から④はニュージーランド)。他にも拙著では紹介できませんでしたが、数多くの温泉をガイドブック情報から探してきました。ガイドブックでは、エリアごとに温泉が整理されているので、知らずに帰国して、後になって「近くにこんな温泉があったのか。失敗した!」と後悔することもありません。

 ただ、海外の温泉ガイドブックをネット書店で購入するのは、お金もかかりますし、洋書を読むのも大変です。筋金入りの温泉マニアでないとハードルが高いかもしれません。

左:カナダの離島ホットスプリングアイランド
右:滝つぼにバスタブが置かれただけのトゥトゥカウタブス

(2) インターネットの日本語サイトで探す

 当然ですが、インターネットで探すのが最もポピュラーな方法です。ただ、ネット情報はかなり偏っています。例えば、Googleで「トルコ」「温泉」という2つのキーワードを入力して「画像」を検索してみます。すると、「パムッカレ」の石灰棚ばかりがヒットします。旅行会社や各国の観光協会などのWEBサイトが検索上位を占めますが、写真は「今」の状況を表しているとは限りません。「見た人を惹きつけて旅行に行ってもらいたい」という想いの表れでしょうか。湧出量の減りつつある今では考えられない豊富な湯量の石灰棚の写真が主流です。さらには、棚に入るのが許されていた当時の古い写真も少なくありません。このような写真を見て、期待して訪れる人が多いので、最近のパムッカレは「がっかり温泉」と呼ばれてしまうのでしょう。

 「トルコ」「温泉」「-パムッカレ」と、パムッカレの前に「-(マイナス)記号」をつけて、パムッカレを除くトルコの温泉画像を検索してみるとどうでしょうか? パムッカレの写真は激減しますが、温泉の写真自体が減ってしまいます。

 日本人にそれほどなじみの少ない国でも同様です。「コスタリカ」「温泉」と画像検索すれば、中米一の大規模温泉宿である「タバコンリゾート」の写真で埋め尽くされます。「-タバコン」を付け加えると、減りますが、タバコンのあるアレナル火山エリアの他の施設の写真が今度は大半を占めます。

 ここまで極端でなくても、カナダならバンフ、メキシコならトラントンゴ、タイならクラビ、ニュージーランドならロトルアと、特定の温泉がかなりの割合を占めます。ちなみに「中国」「温泉」では、中華人民共和国より、日本の「中国」地方の温泉がヒットします。

 日本人が訪れる海外の温泉はだいたい決まっていて、それ以外の情報はほんの少ししかないのです。パムッカレやタバコンを除いた画像から、興味のある温泉が見つかれば、深堀りできますが、「目を見張る」ような温泉写真が見つかることはまれです。日本語での情報検索には限界があると言えるでしょう。もちろん、筆者のような温泉マニアが普通ではないのであって、有名な海外温泉の情報が豊富であれば、大半の人にとってはありがたいことだと思います。

左:約10年前のパムッカレ。石灰棚に温泉が満ちていた(トルコ)
右:とはいえ少し離れると、湯が枯れて黒変していた
左:タバコンリゾートの園内は湯の滝、湯の川だらけ(コスタリカ)
左:タバコンの遊歩道沿いの川もすべてが温泉だ

(3) インターネットの英語サイトで探す

 では、英語で「Turkey」「Hot spring」、「Costa Rica」「Hot spring」と検索したらどうでしょうか。結果はあまり変わらず、パムッカレ(Pamukkale)とタバコン(Tabacon)ばかりが目立ちます。マイナス記号でパムッカレやタバコンを除いてみると、掲載数は減りますが、日本語ほどは減りません。英語での投稿数は日本語よりはるかに多いためです。「ふるい」にかけられた残り温泉画像を丹念に調べていくと、これはと思うような写真が見つかることがあります。

 また、表示された画像の説明文を元に、「8 Best Hot Springs in ○○ 」「15 Amazing Hot Spring in ○○」「5 Top Hot Springs near ○○」など、英語での「まとめ」サイトを調べてみると、メジャーな温泉以外の情報が見つかります。「気になる温泉」や「気に入った温泉」が見つかったら、今度はその温泉名をキーワードとして検索すると、徐々に詳しい情報に近づきます。

 なお、「中国」が日本の中国地方と被ってしまうように、英語での検索にも特有の難しさがあります。例えば、「メキシコ(Mexico)」「Hot Spring」で検索すると、アメリカのニューメキシコ(New Mexico)州の温泉が混在します。アメリカのアーカンソー州にはその名もホットスプリングス(Hot Springs)という町があります。ビルクリントン元大統領の出身地ですが、アメリカの温泉を検索していると、たびたびこの町が登場します。古き良きアメリカの入浴スタイルをいまに伝える温泉で、何ら責任はないのですが、検索時には妨げとなることがあります(ホットスプリングスではマイナス記号で除外することもできません)。

 代表的な析出物である石灰華の英語はトラバーティンですが、「Travertine」「Hot Spring」と検索すると、アメリカのカリフォルニア州の野湯の写真が大量に見つかります。この温泉の名前はトラバーティン・ホットスプリングスなのです。石灰棚(Travertine Terrace)で検索すると、パムッカレとアメリカのイエローストーン国立公園が多く検索されますが、じっくりと眺めていくと、その他の地域の石灰棚の写真も混ざっていて、温泉探しの「糸口」になります。

 宝探しをするように英語での検索を重ねていくと、あっという間に時間が経ってしまいます。最も有効な手段は「(4) その国の言葉で検索する」ですが、これは次回に紹介します。

左:アーカンソー州のホットスプリングスの源泉池(アメリカ)
右:ホットスプリングスの老舗アーリントンホテル(アメリカ)
左:シェラネバダ山脈の東に位置するトラバーティン温泉(アメリカ)
右:イエローストーンの石灰棚も場所によって枯れつつある(アメリカ)