今回は中国です。Amazonの洋書コーナーで検索しても英語を中心とした西洋の文献が表示されるだけで、中国や韓国など、東洋の書籍は表示されません。日本でいう「洋書」とは実質「西洋書」なのです。ではどうしたらよいでしょうか? 日本には中国で発行されている書籍を専門に扱う書店がいくつもあります。その多くはWEB注文可能なので、温泉に関する用語で検索してみると、ときどき面白い温泉本に出合うことができます。売切れたらそれっきりということもあるので、「これは!」という本を見つけたら購入するようにしています(何の有益な情報もなく、大失敗という経験もあります)。
上記はともに中国全体の温泉を紹介した本ですが、温泉地単位の説明なので、個々の宿や入浴施設の情報はありません。つまり、草津温泉、有馬温泉などという単位で、それぞれ2ページほどの紹介があるだけです。実用的な情報は手に入りませんが、広大な中国のどこにどのような名前の温泉があるのかを知るだけでも重要な情報です。
もっと詳しい情報を知るには「省」を単位とした温泉書籍を探す必要がありますが、日本のWEB書店ではそこまで扱っていないことが多いです。ISBNコードなどがわかれば、それを伝えて注文することはできますが、値段がわからないというリスクがあります。一般に中国の温泉書籍は写真が少なく、地図もほぼありません。中にはすべて文字だけという書籍も多いです。
このため、大まかな温泉名とエリアがわかれば、あとはWEBで情報を検索していますが、「中国・温泉」と検索すると、日本の中国地方の温泉ばかりがヒットして、中国(中華人民共和国)の温泉情報は得られません。中国で使われている漢字(簡体字)を使えば、中国の温泉を調べられるのですが、「中国」「温泉」という単語は日本語でも簡体字でも同じです。このため、「広東省→广东省」のように、簡体字が日本の文字と異なる地名で入力しないと、中国の温泉を探すのは難しいです。
ただ、大規模温泉の検索は容易ですが、野湯やローカルな温泉はなかなか見つかりません。中国では「大きいこと」「豪華なこと」が優先されるので、「素朴」で「小さな」温泉をアピールする人があまりいないのです。拙著で紹介した貝渓温泉も、街中の巨大な石灰棚で、WEBで小さな写真を見つけたときは驚愕しましたが、地元の人はその希少さを知りません。子供たちが卵や芋を茹でていて、周囲にはごみが散乱するなど、粗雑に扱われていました。
なお、WEBで中国の情報を調べる際には注意が必要です。他のサイトの完全コピーが珍しくなく、複数のサイトの内容が一字一句違わないこともよくあります。どれが大元なのかはわかりませんが、添付されている写真や日付などの情報を元に真贋を判断しています(もちろん、すべてが「贋」ということも多いです)。写真についても、コピペが多く、中には別の温泉地の写真が掲載されていることも頻繁です。時には、露天風呂の傍らに風呂桶と手ぬぐいが映っており、どうみても日本の温泉地の写真のコピーだなということもあります。ブログの著者が写真に映り込んだ旅行記のようなサイトは比較的信用できますが、それでも写真の枚数を増やすために、コピーした写真も混ぜて「盛っている」ケースが多々あります。真贋を判別するのを楽しむといった「心の余裕」がないと、中国の温泉情報検索は大変です。
ちなみに中国では温泉が大人気で、次々と豪華なホテルが開業しています。新しい施設では男女一緒に水着で楽しむような温泉が多いですが、中国の東北部(遼寧省、吉林省)や南部(福建省、広東省)、西部(雲南省、四川省)など、中央部から離れた場所に行くと、男女別に裸で入浴する浴室を見かけるようになります。全般として中国では火山性の温泉が少なく、マイルドな泉質が多いですが、雲南省、四川省、チベット自治区などの西部では成分の濃厚な温泉も散見されます。知らない人には信じられないかもしれませんが、日本風の温泉(特に露天風呂)は大人気です。
中国全体でいくつの温泉があるのか、まとまった統計を見たことはないのですが、各省で紹介されている温泉を単純に合計するだけでも1万を超える温泉があると思います。中国の田舎は未知の温泉の宝庫で、コロナ前は何度も訪れていました。雲南省で「湯口付近の析出物が見事」との記述をみつけ、近くの村で聞いてみました。すると、「その村は車道が通じていない。歩くと2時間半かかるが、トラクターに便乗すれば半分ほどで着ける」との返事。時間もなく断念しましたが、このような温泉がいくらでもあるのです。