世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

B1 川原の湯っこと滝の沢温泉(秋田県)

 世界の温泉と題するブログですが、日本の温泉も少し採り上げたいと思います。とはいえ、日本の温泉ブログは無数にあって、入り込む余地などなさそうです。そこで今から20~30年前の温泉の写真を使って、今は亡き貴重な温泉を紹介してみたいと思います。WEB上を探しても、「当時の写真」が見つからないような温泉を選んでみます(私の検索不足で、紹介済みであれば申し訳ありません)。なお、当時はスマホもデジカメもなく、一眼レフカメラのレンズも50ミリの標準レンズ一本だけという時代でしたので、写真の出来には目をつぶってください。

 

 最初に紹介するのは秋田県大館市の「川原の湯っこ」です。同名の温泉が湯沢市の秋の宮温泉郷にあり、スコップで川原を掘って入浴する温泉として有名です。それとは違い、大館市の花岡川の土手にぽつんと存在した掘立て小屋の温泉です。トタン板や木板など、ありあわせの材料で作った素朴な浴舎は、知らなければ素通りしてしまいます。正面からみると、あえて色の異なる木板をグラデーションのように配したのかわかりませんが、唯一無二のデザインです。デジカメ時代と違い、昔はフィルム代が高くて、同じ場所の写真を何枚も撮ることはなかったのですが、遠景から近景まで角度や位置を変えては多数の写真を撮っています。当時の興奮ぶりが思い出されます。内部は木造で、一つの浴槽を衝立で仕切り男女別にしています。ぬるめの湯で、誰もおらずのんびりと浸かれましたが、味や臭いは覚えていません。

 もう一つ、同じ大館市内にある滝の沢温泉を訪ねてみました。1993年に閉山した花岡鉱山の近くで、細い未舗装路を進んだ奥にポツンと現れます。意外に大きな建物で手前が女性用、奥が男性用の浴室でした。カビの生えた室内にタイル張りの浴槽が一つ。温泉の成分なのか鉱物なのかわかりませんが、緑や茶色に床が染まっており、おどろおどろしい雰囲気でした。同じくぬるめの特徴のない湯でしたが、一人で入浴していると少し怖くなるような雰囲気の無人浴場でした。滝の沢温泉はWEB上での訪問記も残っていて、2005年に閉鎖されたと書かれています。

 これらの温泉を知ったきっかけは坂本衛氏が1997年に著した「超秘湯!!ガイドブックからこぼれた温泉めぐり」という本です。地元の人だけが知っていて観光化されていないローカルな温泉ばかりを収録した温泉本で、日本の温泉書籍史上でも画期的な本でした。この本を片手に、各地の温泉を回りましたが、今はすでに存在しない温泉が多いようです。(1998年入湯)