世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

A3 温泉のガイドブック① ニュージーランド

 日本には温泉のガイドブックが無数にあります。行きたい地域、旅の目的や興味に応じて、好みのガイドブックを選べます。それに比べ、海外の温泉ガイドブックはとても少ないです。もちろん、ウェブでも温泉情報を検索できますが、「○○国で絶対行きたい温泉トップ10」、「行ってよかった○○温泉」など、有名な温泉のみを紹介しているサイトが主流です。その国全体の温泉を把握するのに私自身が活用したガイドブックのうち、本当に役立ったものを何回かに渡って紹介します。まずはニュージーランドです。

左:拙著で紹介したトゥトゥカウタブスもサリーさんの本に紹介されていた
右:ニュージーランドの旅の友だったガイドブック(最新版ではない)

 サリージャクソン氏の「ホットスプリングス・オブ・ニュージーランド」。100か所近くのニュージーランドの温泉を紹介した本で、第4版まで改訂を重ねています。地図や写真は多くありませんが、個々の温泉のアクセス方法や雰囲気が丁寧に述べられていて、とても役に立つガイドブックです。残念ながら今は中古本でないと入手できないようです。なお、洋書を検索すると、類似の名前の本がありますが、これは注文があったときだけ、昔の本をリプリントする「オンデマンド本」で役に立ちません。私は「どんな本だろう」と買ってみて、激しく後悔しましたので、サリージャクソン氏の本と間違えないようにして下さい。

 

 拙著「ほぼ本邦初紹介!世界の絶景温泉」の中で「トゥトゥカウタブス Tutukau Tubs」を紹介しましたが、この本にのみ、その温泉情報がありました。オラケイコラコの地熱地帯に向かうトゥトゥカウ川の途中にあり、ボートでしか行けません。湯量豊富な滝の下に、誰が置いたかポリバスの浴槽が二つあるだけという豪快な野湯でした。

 

 もう一つ、この本がきっかけで訪れた温泉を紹介します。ニュージーランド最大の温泉郷ロトルアの南45キロにゴールデンスプリングスがあります。シンプルなコテージが園内に点在し、自分の宿泊するコテージの前まで車で行けるモーテルタイプの宿です。敷地内を流れる川が温泉と知り、訪ねてみたのですが、「宿泊客以外は入浴できない」と断られました(いわゆる「のみ不可」です)。このため、2年後に今度は宿泊の予約をして訪れました。温泉の川は勢いがあり、ぬるめですが、どこでもほぼ貸し切りで入浴できます。ただ、本当のお目当てはここではありません。

左:ゴールデンスプリングスはモーテルタイプの宿
右:敷地内を温泉の川が流れる。源泉に比べ灰濁している

 道路向かいのヴィンセント家の敷地内に膨大な湯川の源泉があるというのです。自家用温泉、いわゆるジカ専です。サリーさんの本を手に、ヴィンセント家の前をうろうろしましたが、誰もいないようです。柵もあるし、さすがに勝手には入れません。アメリカでは、「Don’t Trespass(不法侵入するな)」の看板を無視して敷地内に入ると、射殺されても仕方ありませんが、そのような表示はありません。どうしようかと待っていると、まもなくヴィンセントさんが車で帰宅してきました。「私は温泉の神に守られているのではないか」と思う一瞬です。サリーさんの本を片手ににこやかに話しかけると、「日本人か?時々来るよ。温泉ならOKだよ」とフレンドリーな返事。さすがは日本の温泉バカ。すでに何人も来ているとのことでした。

 ヴィンセントさんの指示に従い、広大な牧草地の中を車で進み、巨木の下で車を停めます。途中、牛が逃げてはいけないので、柵は開けたら閉めます。両側に池がありますが右手は熱くて入れません。左手の池は少し黄濁して、ゴールデンという形容に納得です。表面は気泡で覆われ42℃と適温なのですが、深さがわかりません。手でつかむためのロープが渡してあるので、それを支えに池に入ると、端部でも1.5メートルの深さがあり、中央はもっと深いです。私が訪れたのは10年以上前なので、今でもヴィンセントさんが住んでいるのか、入浴を快く認めてくれるのかはわかりません。

左:巨木の下に湧くゴールデンスプリングスの源泉
右:猛烈に泡立つ湯池の表面とつかむためのロープ