世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

A22 海外の温泉付きホテル⑤ ニュージーランド(その3)

もう一度だけニュージーランドで泊まったことのある温泉宿を紹介します。

 

(1) タウポの宿

 ロトルアから南へ80キロのタウポまでの間には温泉が集中しています。南端のタウポはタウポ湖という湖のほとりに開けた町で、湖岸から温泉が湧いています。特に、湖の北東岸では、1キロ以上にわたり随所で温泉が湧いていて、「ウォーム・ウォーター・ビーチWarm Water Beach」と呼ばれています。

 タウポにも多くの宿泊施設がありますが、ロトルアと同じく温泉付きの宿はあまりありません。温泉宿の大半は、モーテルのような小規模施設で、宿泊客のみが温泉を利用できます。「レイク・フロント・ロッジLake front Lodge, Taupo」に宿泊してみました。以前の経営者が日本人だったそうで、なじみのある温泉マーク付きの看板が迎えてくれます。素朴な雰囲気の宿で、敷地内にはクリーム色の外観の2階建て宿泊棟が並んでいます。ここの魅力は何といっても客室内の温泉です。多くの客室に温泉浴槽があるので、部屋にいながら温泉を楽しむことができます。また、温泉付きの部屋でなくても心配ありません。敷地内には共同浴場のような浴室が2室あり、貸切りで利用できます。温泉を目当てに泊るニュージーランド人は少ないようで、温泉浴室はいつでも空いていました。

 浴室は日本の伝統的な共同浴場のようなスタイルの湯小屋で、天井には蒸気を逃がすための穴が設けられています。浴槽はコンクリート製。鮮やかな青色で塗装されています。客室内の浴槽より広く、5~6人は入れそうです。深さも十分にあるので、肩までじっくり浸かることができます。無色透明、無味無臭の湯ですが、この地域の他の温泉と同じく、若干緑がかってみえました。

タウポの温泉宿。Private Hot Mineral Poolsは客室温泉を意味している。
客室(左)と温泉浴槽(右)

 

(2) タウランガの宿

 ロトルアの北60キロに位置するタウランガはプレンティ湾に面した海沿いの町。随所で温泉が湧いていて、温泉付きの宿泊施設がいくつもあります。ただ、広いエリアに点在しているので、ロトルアのような温泉町の雰囲気はまったくありません。噴泉や泥池を見学できるロトルアのように地熱活動が活発というわけではなく、ボーリングで掘り当てた温泉が大半です。無色透明、無味無臭の湯が中心で、温泉らしさは今ひとつですが、プレンティ湾の温泉をめぐる基地としての利用価値は高いですし、荷を解いた後でのんびりと浸かれる温泉の魅力は捨てがたいものです。

 温泉付きの宿泊施設の大半はモーテルです。マウンガタプ地区の「リッツ・カールトン・モーテルRitz Carlton Motel」に宿泊してみました。国際的に有名な高級ホテルチェーンと同じ名前ですが、まったく関係ありません。「こんな名前を付けて大丈夫なのだろうか?」と思いましたが、今回の記事化に際して調べたところ、この宿は見つかりませんでした。おそらく改称させられたか、廃業したのでしょう。

 リーズナブルな料金で宿泊できるごく普通の平屋建てモーテルですが、全室に専用露天風呂がついています。「全室貸切り温泉付きPrivate Hot Mineral Pool with Each Unit」という表示がそれを物語っています。前回も書きましたが、ニュージーランドでは、ホットミネラルプールと書いてあれば温泉ですが、サーマルはただの沸かし湯です。

左:タウランガの宿。ここも客室に温泉プールを備えていることをアピールしている。
右:シンプルな客室。白い壁の内側に露天風呂がある。
客室のベッドルーム(左)と庭の温泉浴槽(右)

 いとこが日本人と結婚して日本に住んでいるという主人はとても気さくでした。温泉に興味があると伝えると、裏庭のマンホールのような蓋を開けて、「ここが源泉だ」と教えてくれました。源泉は高温のため、時間をかけて自然冷却し、そのまま浴槽に注いでいるそうです。本物の温泉だということを身振り手振りも合わせて力説してくれたのが印象的でした。

 室内は8畳程度のリビングルームと、それより少し狭いベッドルームの2室です。加えて狭いながらもキッチンとシャワー室、トイレがあります。高級ホテルと比べれば、ずいぶんとチープなつくりですが、温泉旅では十分です。浴槽はリビングルームの窓の外側にあります。約2メートル四方の露天浴槽が1つあり、湯温は40℃。日本人にはちょうどいい湯加減でした。白いタイル張りのごく普通の浴槽で、壁で仕切られているために眺望もききませんが、掛け流しの湯にいつでも裸で入れるのは、何といってもありがたいものです。