メキシコシティから北西へ車で3時間のエル・ヘイセル温泉はイダルゴ州にあります。拙著でも紹介した温泉ですが、掲載できる写真数に限りがあったので、ここで詳しく紹介しておきます。
エル・ヘイセルは、英語読みならザ・ガイザー(ザ・間欠泉)という意味です。イダルゴからケレタロとの州境近くに向かうと、山の懐に猛烈な噴煙が上がっているのが見えます。噴泉を取り巻くように宿と温泉施設を作ってしまったのがエル・ヘイセルです。週末とあって、駐車場には多くの観光バスが停まっていました。
宿泊棟は2つの建物がV字型(写真の左下)に並ぶ配置で、客室はダブルベッドが一つ置いてあるだけのシンプルな造りでした。窓を開けると、向かいの棟がみえるだけ。なぜV字型にしたのか不明です。
早速、温泉エリアに向かうと、プールサイドの脇の木陰には無数のテントが並んでいます。キャンプスタイルで宿泊する人もいるようです。手前にはごく普通のプールが並んでいますが、それは無視して奥の噴泉地帯に向かいます。2方向に突き出した煙突状の配管から、轟音と共に猛烈な噴気が放出されています。噴気とともに湧き出した湯は、直下の池に注いでいます。日本語で間欠泉というと、一定の間隔を置いて噴出する湯を意味しますが、ここでは常時噴出し続けています。
湯量は豊富で湯温は60℃。「高温危険」の看板があちこちに立っています。猛烈な蒸気はまさに天然のミストサウナで気持ちよく、温泉入浴と蒸気浴の双方を楽しめます。風向きが一定でないので、同じ人が蒸気をいつまでも浴び続けるわけではありません。自然の力をうまく利用しています。
噴泉地帯から下ると温泉プールのゾーンです。円形のプールや長方形のプール、さらには南国風の樹木に囲まれたプールなど、様々なプールが広い園内に点在しています。高台の噴泉地帯から樋を伝って、温泉が流れてくるので、上流側ほど熱めです。メキシコ人は熱い湯を好まないので、下流のぬるいプールが混雑しています。硫黄臭はかすかですが、アルカリ性の湯でツルスベ感がとても強いです。
多くの利用客がいても、敷地が広大なので混雑感はありません。ホテルに宿泊する者、プールサイドにテントを張って過ごす者、毛布を身体に巻いただけで眠る者。みなが思い思いのスタイルで温泉を楽しんでいました。
かなりの客数がいましたが、園内でアルコールは禁止とのこと。このため、夜遅くまで騒いでいるようなグループはなく、静かで快適な眠りをとれました。また、海外の温泉宿では、食事はついていないのが普通ですので、施設の向かいのシンプルなレストランでとりました。轟音とともに噴出する温泉は大迫力で、地球の営みを実感できる温泉宿としておすすめです。