世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

A36 カッパドキアのついでに行ける温泉(トルコ)


 新刊「さあ、海外旅行で温泉へ行こう 親切ガイド 世界の名湯50選」の中で、トルコは「特集」として扱いませんでしたが、4つの温泉を紹介しました。その中でとてもユニークなのがシワス県のカンガル・バルクル温泉です。小魚が足の角質をついばみ、皮膚の状態を整えてくれるという「小魚温泉」の元祖的存在として世界的に有名です。同系の魚は世界の各地に棲息し、日本でも養殖に成功して健康ランドなどで体験できます。ただ、カンガル・バルクルでは自然のままのぬるい温泉の川にたくさんの魚が泳いでいて、小魚療法を体験できます。観光客用の温泉プールや皮膚病患者の療養客用プールにも小魚を放っており、湯治のために滞在する人が多いとのことです。

左:日帰り客が小魚温泉を体験できる温泉プール
右:プールに入ると、体長5センチくらいの小魚がすぐに突いてくる

 この温泉に興味を持ってくれた読者もいるかと思いますが、わざわざここだけを目的に行く人はほぼいないでしょう。周辺にはいくつかの温泉があるのですが、書籍では紹介する余裕がなかったので、ここでお伝えしたいと思います。なお、以下の各温泉名をグーグルマップに入力して検索すると、それぞれの温泉の場所がわかります。

 

カイセリ空港はカッパドキア観光の拠点

 奇妙な形の岩山が立ち並ぶカッパドキアはトルコ観光の目玉です。個人で訪ねる場合は、トルコ中部のカイセリ空港が起点です。カッパドキアは空港から西へ車で約1時間、カンガル・バルクル温泉は空港から東へ4時間です。筆者はカイセリに宿をとって車をチャーターして、初日はカンガル・バルクル温泉へ、2日目はカッパドキア観光を軸に回り、3日目はカイセリ周辺の温泉を楽しんでイスタンブールへ戻りました。

 

①スジャク・チェルミク温泉Sıcak Çermik Kaplıcası

 カイセリを朝早く発って小魚温泉を楽しみ、その帰り道で少し遠回りしてもらいました。数軒の施設がありましたが、老舗のセファ・ホテルSefa Otelに付随した個室浴場を選びました。濃厚な成分で有名なのを事前に調べていたのです。廊下沿いに個室が10室ほど並んでいて、貸切りで利用します。三畳ほどの空間に脱衣室とトイレ、奥に浴室がありました。窓はありませんが、長方形の浴槽には茶褐色の湯がかけ流しです。溢れた湯は浴槽の奥へと流れていきます。浴槽の側壁にはウロコ状の析出物が層を成していて、外国の温泉ではあまり見かけない光景です。源泉は48℃。炭酸の含有量が多すぎて浴槽を痛めるため、源泉をいったんタンクに溜めて炭酸を少し抜いて使っているとのこと。そのすごい源泉に浸かってみたいものです。

左:濃厚な湯がかけ流しの貸切風呂
右:溢れた湯が川面を析出物で覆う

② バイラムハジュ温泉Termal Bayramhacı Kaplıca

 翌日は終日カッパドキアを観光し、復路で少し遠回りしてバイラムハジュ温泉に立ち寄りました。カッパドキアが近いだけあって、斜面に並ぶ家々の背面に洞窟住居の穴が数多くみられます。集落内の曲がりくねった道を走ると、突き当りに素朴な温泉施設がありました。露天のプールはクズル川を臨む絶好のロケーション。左のプールには源泉が注いでいて、40℃前後の適温。「湯の色が緑色だが、汚れているのではなく温泉の成分である」と壁面に書かれています。右のプールはそのこぼれ湯なのか、かなりぬるめでした。右手の室内階段を下りた先には、長方形の浴槽に温泉がかけ流しで溢れていました。高い位置の窓から陽が射しこみ、透明な湯が輝いています。湯温は39℃とぬるめで、長湯に向きますが、残念ながら夕刻だったため、早々に切り上げざるを得ませんでした。

左:かつての洞窟住居が奥に見えるバイラムハジュの村
右:階段を上ると露天プール、右手の入口から入ると内風呂がある
左:夕焼けが迫る時間帯の露天風呂。左が温泉のプール
右:トルコらしい青を基調とした内風呂

③ コザックル温泉 Kozaklı Kaplıca

 カイセリから北西へ130キロほどの場所にコザックル温泉があります。シワス県の西、ネヴシェヒル県の大温泉地で大型のホテルが建ち並んでいます。たいていのホテルには、きれいで大きな温泉プールがあり、日帰りでも利用できます。カッパドキアの北、車で1時間の場所にあるため、欧米のツアーでは宿泊に利用するようですが、日本のツアーはカッパドキアの後、コンヤを経由してパムッカレへと西進するので、まず利用しません。

 これまでの2日間で私の好みを理解したドライバーが、2つの場所へ連れて行ってくれました。一つは地元民の利用が中心の共同浴場Belediyesi Kaplıca、もう一つは源泉がかけ流しの野湯(廃業した施設の露天風呂)です。海外で車をチャーターする際、「勘所」のいいドライバーか否かが重要なのですが、今回は大当たりでした。

左:男女別共同浴場の内風呂。トルコではこんな雰囲気が多い
右:廃墟の露天風呂跡。向こうに高級ホテル群が見える

④テッキョズ温泉Tekgöz Kaplıcaları, Yemliha

 コザックルからカイセリに戻る途中で、もう一か所立ち寄りました。カイセリに住んでいるドライバーも「初めて行く」とのこと。着くと、見た目には何もないような施設ですが、階段を降りて半地下に降りると驚きの浴室がありました。オスマン帝国時代の浴場が残っていて、ドーム型の屋根が印象的です。窓がなく、大量の湯がかけ流しのため、蒸気でモワッとします。昔から眼病に聞く温泉として知られているそうで、新潟県の貝掛温泉と同じようにメタホウ酸を多く含むのかもしれません。なお、温泉に興味があると伝えると、女性用の浴室も見せてくれましたが、こちらはごく普通の長方形の浴槽でした。

左:施設の外観。どこに何があるのかわからない
右:半地下のトルコ風浴室は幻想的

 トルコは全土に渡って温泉が湧いています。同じく新刊の中で紹介したパムッカレについては、周辺の温泉も含め、「地球の歩き方」WEBの連載記事の中で紹介しました。あわせてご参照下さい。