世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

A45 アテネ(ギリシャ)から日帰りできる温泉

アクロポリスの丘に建つパルテノン神殿はギリシャのシンボル

前回に続き、世界遺産の観光と一緒に楽しめる温泉を紹介します。今回はギリシャの首都アテネです。古代文明に関心のある筆者は、温泉抜きでもいつかアテネを訪れたいと思っていました。調べてみると、ギリシャにも数多くの温泉があるではないですか。一石二鳥の旅を計画してみました。

 

 

日本からギリシャへの直行便はありませんので、ヨーロッパの主要都市で乗り換えが必要です。この時はフランクフルトを経由して、ギリシャ第二の都市テッサロニキに向かいました。テッサロニキを起点に北部の温泉を巡った後、いくつもの温泉が湧くエーゲ海のレスボス島に国内線で移動しました。その後、再び国内線を利用してようやくアテネに到着です。拙著(第一弾)では、テルメス温泉(北部)やポリクニトス温泉(レスボス島)などを紹介しています。

旅の最後にアテネ周辺の温泉を巡ることにしましたが、例によって、時間的なゆとりがありません。1日で4か所の温泉を回るために専用車を手配したいと思いましたが、アテネから郊外に向かう車をチャーターできる会社がなかなか見つかりません。ふと、アテネのタクシー会社の日本語サイトが見つかりました。喜び勇んでメールを送ると、返事は英語でした。「日本語のページは受付用で、日本語を話せるドライバーはいない」とのこと。ただ、自分のプランを伝えて英語で何度かやり取りすると「一日あれば十分行ける」というのでお願いしました。

アクロポリスの丘からアゴラ(広場・市場)とアテネ市街を眺める

【時計回りのルートを選択】

行きたい温泉はテルモピュライとエディプソスの2つ。ただ、テルモピュライの周辺に小さな温泉が2つあるため、全部で4つとなります。エディプソス温泉は、ギリシャの中でクレタ島に次ぐ大きさのエヴィラ島の北部にあります。事前にドライバーと相談すると、エヴィラ島は南部のハルキスでギリシャ本土とつながっており、エディプソスからは本土と結ぶフェリーがあるとのこと。順番的には先にテルモピュライを訪ねた方がよいというので、テルモピュライからエディプソスに至るルートに決まりました。

今回訪ねた温泉の場所(Google Mapより)

【テルモピュライと周辺の2つの温泉】

アテネから北へ車で2時間のテルモピュライ温泉は拙著(第二弾)で紹介しましたが、簡潔に再掲しておきます。ここは、世界史の授業などで習った「テルモピレーの戦い」があった場所。山と海に挟まれた細長く狭い地形で、南下するペルシャ軍を食い止めるのに最適でした。紀元前480年8月、ペルシャ軍の大軍勢をわずかな兵力で迎え撃ったギリシャ軍の将はスパルタ王のレオニダス。奮戦したものの圧倒的な兵力差でギリシャ軍は敗れましたが、翌月のサラミスの海戦で勝利しました。記念公園では雄々しいレオニダス像を仰ぎ見ることができます。

テルモピュライは日本語に訳せば「熱の門」という意味で、もともと温泉地だったのです。巨大な湯滝の滝つぼや川で野趣あふれる浸かれます。勢いのある湯滝は地面を叩きつけるように流れ落ちるため、温泉水が砕け散り、強烈な硫黄臭を発しています。

テルモピュライの5キロ西にはダマスタ、アテネ方面へ25キロ戻ったフェリー乗り場の近くにはカメナブーラなどの素朴な温泉があります。

テルモピュライの温泉の滝

川の一部がそのまま露天風呂のダマスタ温泉

カメナブーラ郊外の露天温泉は足元自噴

【フェリーに乗ってエビア島へ】

カメナブーラ近くのアルキサ港からエヴィラ島のエディプソスに向けフェリーを利用しました。待ち時間があったので、港近くのレストランで遅めの昼食をとります。ドライバーのアドバイスで、すぐに調理できる「白身魚のフライ」を注文。食後はエディプソスまでは45分の船旅です。

船がエディプソス港に近づくと正面に析出物の丘が見えてきます

港からは右手に析出物の丘が見えます

エディプソス温泉は古くから知られていて、古代ギリシャのアリストテレスがその効能を述べているほどです。ギリシャ系アメリカ人のオペラ歌手マリアカラスや、イギリスのチャーチル首相が訪れたことでも知られます。茶色の析出物の造形が見事で、船がエディプソスに近づくと、析出物の丘が見えてきます。着岸して右手へ数百メートルの場所に海岸温泉が湧いています。80か所ほどの源泉があり、湯温は28~86℃と様々です。岩をくりぬいた露天風呂がいくつもあり、底から湯が湧いています。干潮の時刻にはもっと多くの浴槽が現れるそうです。適温の浴槽を見つけ、豪快な湯浴みを楽しみました。

析出物の丘の上部は平らで、いくつもの手掘りの露天風呂があり、自噴湯を楽しめます

岩壁の奥からも湯が湧いていて、勢いよく流れていました

アテネに戻る途中で振り返った析出物の丘。もう少し滞在したいところでした

この日は時間がないので、海辺の野湯を楽しむだけでしたが、温泉はホテルや公共浴場にも引かれています。時間があれば、ぜひ一泊してみたい温泉地でした。朝、ホテルを出発してから10時間の日帰り旅でアテネに戻りました。アクロポリスの丘に近いホテルを予約していたので、翌日は自力で古代遺跡観光を楽しみました。

なお、私のような温泉バカでなければ、テルモピュライとエディプソスの両方を一日で回るのは避けた方がよいと思います。どちらか一方に絞れば、もっとゆっくりと温泉やランチを楽しめます。もしアテネ滞在中に一日の余裕があるならば、どちらかの温泉を訪ねてみてください。