【麗江と大理】
中国の世界遺産を訪ねたついでに温泉も楽しむ特集の第三弾です。雲南省の麗江は少数民族のナシ族によって開かれた町で、標高2400メートルの高地にあります。昔ながらの面影を残す旧市街は「麗江古城」として1997年に世界遺産に登録されました。中国でも有数の人気観光地のため、いつでも混雑していて、「通りには土産物屋ばかり」というクレームも絶えません。ただ、麗江旧市街の宿に泊まって、翌朝、町を歩いてみると、日中の喧騒が嘘のような美しい街並みを堪能できます。
今回は麗江で日本語を話すドライバーを雇って、大理までの往復の旅を楽しみました。
麗江から南へ200キロ、車で3時間の場所にあるのが大理石の語源ともなった大理です。少数民族のぺー族(白族)によって築かれた町で、かつては南詔国、大理国の都として栄えました。雲南とチベット・ミャンマーを結ぶ「茶馬古道」の要衝でもあり、今は大理白族自治州の州都となっています。標高は1950メートル。東には耳の形をした大きな湖「洱海」があります。昔の面影を残した旧市街の「大理古城」は年中多くの観光客でにぎわっています。
麗江と大理の二大観光地を巡るツアーは人気ですが、両者のほぼ中間、大理白族自治州の洱源県に多くの温泉が湧いているのはほとんど知られていません。なお、洱海の重要な水源であることから洱源県と命名されました。昔から、「洱源県は十里歩けば温泉があり、五里歩けば泉が湧く、温泉の都なり」と言われているほどです。本ブログは温泉が対象ですから、麗江と大理の観光については触れず、洱源県の魅力的な温泉を中心に紹介します。
① 大理地熱国(大理白族自治州洱源県茈碧湖鎮)
このエリアで最大の温泉施設が大理地熱国です。宿泊もできる巨大施設で、県城(県庁所在地)の近くにあります。案内標識も多いので、迷うことはありません。到着すると、大理地熱国(Da-li Geothermal Paradise)と書かれた巨大な門が迎えてくれます。入場料を支払って中に入ると、園内は広大で、引き続き車に乗って温泉エリアに向かいます。
駐車場に車を停め、太鼓橋を渡って温泉エリアに入ります。園内には多くの露天風呂が点在しているので、混んだ週末でもなければ、貸切り感覚で楽しめます。巨岩に竹林、中華風の文様など、デザイン的にも凝っていて、眺めるだけでも楽しいですし、随所に中華風の「亭(東屋)」があるので、温泉に入ったり休んだりすることができます。施設はまさに豪華の一言。塩化物臭が漂う微褐色透明の湯で、単純泉の多い中国では異色の温泉です。
大滾鍋と呼ばれる源泉池は88℃、深さ4メートルと巨大で、ゴボッゴボッと湯が湧きあがるさまは、まさに「滾」=たぎるという形容がぴったりです。湯口は温泉成分で白く変色するとともに、周囲の岩の表面は微細な茶色い突起でびっしりと覆われています。成分の濃厚さがわかります。
② 火焔山温泉(大理白族自治州洱源県三営鎮)
地熱国の北、約20キロにあります。火焔山温泉酒店は薄いピンク色の外壁の5階建てホテルで、裏手に温泉プールがあります。元々温泉の湧く土地でしたが、80メートルほど掘削すると、95℃の温泉が大量に湧き出したそうです。猛烈な蒸気が立ち上り、近づくと周囲が見えないほど。湯口付近は真っ白な沈殿物で染まっていますが、硫黄臭はさほど強烈ではありません。
源泉が直接注ぐプールは熱くて入浴できませんが、奥側には屋根つきの大きなプール、手前には円形のプールが複数並んでいます。それぞれ湯温が異なるため、好みの温泉プールを探して入浴できます。濁り湯が好きな人は大満足の温泉だと思います。なお、男女別の室内浴室の看板があったので、ドアを開けると、裸でシャワーを浴びられるだけで浴槽はありませんでした。また、道路を数百メートル北上した右手には、昔ながらの共同浴場(温泉澡堂)がありました。
火焔山温泉の周囲は「牛街・三営地熱田」と呼ばれていて、至る所で温泉が湧いています。村の洗濯場や畑の用水など、温泉が人々の生活と密着しているのを見学できます。
③ 下関温泉(大理白族自治州大理市先鋒区温泉郷)
この温泉は洱源県ではなく、大理市内の新市街にあります。大理古城(旧市街)の南、約20キロの下関は昔から温泉が湧く町として知られています。国道と山との間の狭い平地には、個室風呂主体の共同浴場や源泉池、温泉ホテルなどが点在しています。
このときは鳳凰温泉というホテル兼温泉館を訪ねました。浴衣姿の女性の写真やひらがなで「ゆ」と書かれた赤い提灯など、和風を意識した温泉施設です。岩組みの露天風呂はまさに和風で、雲南省にいるとは思えません。ただ、洱源県の温泉に比べると泉質的にはマイルドで色やニオイはありません。屋外には巨大な露天温泉プールがあり、リゾートホテルのような温泉浴も楽しめます。広い園内にはログハウス風の個室風呂(森林温泉小木屋)もありますが、時間がなくて立ち寄ることができませんでした。